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アイスキュロスの『アガメムノン』

 『アガメムノン』は古代ギリシャの三大悲劇作家アイスキュロスの代表的な悲劇作品。紀元前458年頃に初演された。『オレステイア』三部作の一作目である。この記事では、あらすじを説明する。

『アガメムノン』(Agamemnon)のあらすじ

 この物語はトロイ戦争の終わりごろに関するものである。物語の舞台はギリシャのアルゴスである。アルゴスにはギリシャ王の宮殿がある。その屋上で、兵士が合図を待っている。トロイ戦争が終わったことを知らせる合図である。合図の火が灯る
兵士はそれを見て、王妃クリュタイムネストラに伝えにいく。

 入れ替わりで、老人たちが入ってきて、トロイ戦争の経緯を語る。トロイ戦争は、トロイの王子パリスがギリシャ王メネラウスの妻ヘレネを奪ったことから始まった。メネラウスとアガメムノンの兄弟がその復讐として、トロイに戦いを仕掛けたのである。この戦争が10年間続いた。
 アガメムノンはその行軍に際して、移動のために、クリュタイムネストラの娘イフィゲネイアを女神アルテミスに生贄として捧げた。これが物語で鍵を握ることになる。

このようなことを老人たちは回想する。
 そこに王妃がやってくる。老人たちは王妃に、なぜ宮殿に犠牲の儀式をしているのかをを尋ねる。王妃は彼らにたいし、ついにギリシャ軍がトロイ戦争を勝利で終わらせたことを伝える。彼らはこの知らせに半信半疑だが、神々に感謝を示す。
 そこに、戦地からの帰還兵が到来する。ギリシャの勝利の知らせを確証するとともに、この戦いがいかに大変だったかを語る。無事に帰還できたことを神に感謝する。
 王妃は夫のメネラウスと義弟のアガメムノンのもとに使者を送る。帰還兵はメネラウスが戻り道で嵐にあい、現在は行方不明になっていると説明する。

 老人たちはこの戦争の発端ともなったヘレネの美貌とその経緯を語る。そこに、アガメムノンが馬車で帰還する。アガメムノンはトロイの王子パリスの妹カサンドラを奴隷として連れ帰ってきた。
 王妃はアガメムノンを出迎える。宮殿の前に、紫色のタペストリーをしき、アガメムノンにその上を歩いてくるよう求める。アガメムノンはそのような行為が傲慢で思い上がったことだという。そのようなことをすれば、なにか不吉なことが起こるのを心配する。だが、王妃の懇願により、結局はタペストリーの上を歩いて宮殿に入る。

 王妃はカサンドラに、宮殿に入るよう求める。だが、カサンドラは沈黙して、これを拒否する。王妃は苛立ち、カサンドラのもとを去る。
 カサンドラは突如として、神託を受けて、予言を始める。アガメムノンが死んで、自分自身も死んで、復讐する者が現れる。カサンドラはこの予言を成就するかのように、宮殿に入っていく。

 宮殿の中から、アガメムノンが襲われている声がする。

アガメムノンとカサンドラの殺害

老人たちは恐怖で混乱し、どうすべきかとうろたえる。そこに、王妃が血まみれで出てくる。宮殿の中には、アガメムノンとカサンドラの死体がみえる。
 王妃は殺害の動機を語る。上述のように、かつてアガメムノンが行軍中に、王妃の娘を女神に生贄として差し出した。王妃はその復讐をしたという。
 王妃は自身の恋人のアイギストスと共謀して、アガメムノンらを殺害した。アイギストスはこれに加担した動機を語る。かつて、アガメムノンの父がアイギストスの兄弟を殺して調理し、アイギストスの父に食べさせたためだという。
 老人たちはアガメムノンの息子オレステスが復讐しにくるだろうと語る。物語は『供養する女たち』に続く

関連作品

→続編

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→そもそも発端となったイフィゲニアの生贄について

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→ソフォクレス版の『アガメムノン』の続編といえるもの

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おすすめ参考文献

アイスキュロス『アガメムノン』久保 正彰訳, 岩波書店, 1998

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