ルイ13世:フランス王権の再建と拡大

 ルイ13世は17世紀前半のフランス国王(1601―1643)。父の暗殺によって幼少期に王となった。摂政となった母と王権をめぐって対立することになる。実権を握った後、フランス王権の確立を進めていく。これからみていくように、ルイ13世を支えたのは、あの有名な宰相だった。

ルイ13世の生涯

 ルイ13世はフランスのフォンテヌブローでフランス王アンリ4世とマリー・ド・メディシスの長男として生まれた。当時、フランスはアンリ4世がナントの勅令を出すことで宗教戦争が終結して間もなかった。

 アンリ4世は宗教戦争によって疲弊し分裂した国内の和解と再建に邁進した。対外的にも平和政策を基本的に推進し、情勢を安定化させようと試みた。妻マリー・ド・メディシスとの結婚もその一環だった。これらの試みは成功したものもあった。

 だが、1610年、アンリ4世は国内で暗殺された。国内の情勢は再び不安定化し始めた。このタイミングで、ルイは9歳にして、ルイ13世としてフランス王に即位した。母が摂政を務めた。

即位時のルイ13世の肖像画

即位時のルイ13世 利用条件はウェブサイトで確認

 母との対決へ

 1614年、ルイ13世は成人した。だが、母マリーは実権を握り続けようとした。そのために画策したので、ルイは王として実権を握ることができなかった。

 マリーは当時の強国スペインやローマ教皇庁との同盟を強めようとした。そのために、ルイとスペイン王フェリペ3世の娘との政略結婚を取り決めた。しかし、このようなマリーの親スペイン・ローマ教皇の政策は国内で大きな反発を産んだ。アンリ四世の暗殺をローマ教皇庁と関連付ける勢力が活発に活動していたのである。彼らはスペインとローマ教皇庁をフランスの敵とみなしていた。

 このような情勢のもとで、1617年、ルイはリュイヌを重用し、ついに母の寵臣コンティニを暗殺させた。マリーをもブロワに追放した。かくして、ルイが王として実権を握り、統治を開始した。マリーは反乱を起こすが、ルイに鎮圧された。1620年、母の重臣リシュリューが媒介となって、両者は一応の和解に至った。

ルイ13世の治世:宰相リシュリューの活躍

 この頃、フランスでは宗教的不和が強まっていた。1621年には、フランス南部でプロテスタントが反乱を起こした。このような反乱はルイの治世中に何度も起こることになる。

 ルイは次第にリシュリューの政治的才覚を見出し、彼を信頼するようになった。リシュリューは上述のように、もともとは母マリーに見出され、政治家として引き上げられた。だが、ルイと接近し、ルイの王権を支えるようになった。1624年、ルイはリシュリューを宰相に選んだ。

 1628年、フランスのプロテスタント(ユグノー)の本拠地ラ・ロシェルを攻略し、成功した。かくして、ユグノーの政治的脅威は弱まった。

30年戦争への参加

 この頃、ヨーロッパでは30年戦争が起こっていた。スペインや神聖ローマ皇帝のカトリック勢力と、ドイツやスウェーデンのプロテスタント勢力が戦っていた。フランスはまだこれに参戦していなかった。だが、スペインとオーストリアのハプスブルク勢力にたいして、脅威を感じていた。

 リシュリューはこの戦争にプロテスタント側を支援するようルイを説得した。これにたいし、1630年、母マリーやその重臣たちは親スペイン派だったので、リシュリューを解任するよう求めた。この政争は激しさを極めた。だが、最終的にルイはリシュリューを支持し、信任し続けた。母マリーなどは亡命を余儀なくされた。

 1635年、ついにフランスがプロテスタント側で30年戦争に参戦した。スペイン軍がパリを攻めた時、ルイは平時にみられぬ勇敢さを発揮して、これを撃退した。

 1638年、ルイと王妃の間に長男が生まれた。のちのルイ14世である。跡継ぎの誕生により、王権は安定した。1642年、リシュリューが没した。まもなく、ルイも没した。

ルイ13世の肖像画

ルイ13世の肖像画 利用条件はウェブサイトで確認

ルイ13世と縁のある人物


マリー・ド・メディシス:ルイの母で、メディチ家の出身。生涯、王権をめぐって対立し続けた。だが、最晩年は思いもよらぬ展開に。

リシュリュー:ルイ13世に仕えた宰相。フランス絶対王政の基礎を築いた人物として知られる。もともとは政治家ではなく聖職者だった。リシュリューが政治家としてマリーに引き上げられたきっかけとは・・・。

おすすめ参考文献

ミシェル・カルモナ『マリ・ド・メディシス : 母と息子の骨肉の争い』 辻谷泰志訳, 国書刊行会, 2020

Jean-Hippolyte Mariéjol, Henri IV et Louis XIII : (1598-1643), Équateurs, 2013

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