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ジャック=ルイ・ダヴィド:皇帝ナポレオンの画家

 ジャック=ルイ・ダヴィッドはフランスの画家(1748ー1825)。新古典主義の代表的人物として知られる。晩年のフランス王政のもとでは、ルイ16世の宮廷画家として活躍した。フランス革命では、ナポレオンなどを描くという歴史的役割を果たした。代表作には『ナポレオンの戴冠』がある。以下、ダヴィドの絵画の画像とともにみていく。

ダヴィドの生涯


 ジャック=ルイ・ダヴィド(Jacques-Louis David)はパリで商人の家庭に生まれた。画家の道を志し、ロココ美術のフランソワ・ブーシェに師事した。1771年からローマ賞のコンクールに挑戦し始めた。1774年、ついにローマ賞を獲得した。

 イタリア留学

 ローマ賞の特典として、ダヴィドは官費でイタリアに画家として留学した。1775年から1780年の五年間を費やした。これが彼の人生の転機となった。現地で鑑賞したイタリアの古典・ルネサンス美術に大きな影響を受けたのだ。その結果、作風がロココから大きく変わり、新古典主義をフランスで確立することになる。

 フランスの新古典主義美術のリーダーに

 1780年、ダヴィドはフランスに帰国した。絵画を出品し始め、画才を次第に認められる。1783年には、アカデミーへの入会が認められるほどになった。1784年には再びローマに移った。1785年、その地で、代表作として知られる『ホラティウス兄弟の誓い 』を制作した。これにより、新古典主義の作風が確立し、名声を高めた。ルイ16世の宮廷画家に任じられるまでになった。1787年には『ソクラテスの死』を制作するなど、名作を生み出した。

ラヴォワジエ夫妻

18世紀の化学の発展に大きな貢献をした化学者ラヴォワジエの夫妻を描いたもの。

 フランス革命の渦中へ

 この頃、フランスはまさに革命の嵐が吹き荒れることになった。1789年のフランス革命である。この革命で、ルイ16世の首はギロチンではねられた。

 ダヴィドはルイの宮廷画家だったにもかかわらず、革命の支持者として活動した。たとえば、革命初期の国民議会では、議員として参加した。革命のための祝祭や儀式を開催する際には、その責任者となった。さらに、革命の重要な出来事を絵として制作した。たとえば、1793年に暗殺された『マラーの死』などである。同時に、画家として肖像画の製作を続けた。画家の卵たちに指南も行っていた。

 1794年、革命はロベスピエールによる恐怖政治の嵐を乗り越えた。その頃、ダヴィドは反逆罪で逮捕され、リュクサンブール宮殿で半年ほど投獄された。

 ナポレオンの画家になる

 革命の混乱の中で、ナポレオンが台頭してくる。1804年にはついにフランス第一帝政に至り、ナポレオン1世が初代皇帝に即位した。

 ダヴィドはナポレオンに大変気に入られ、彼の首席画家となった。ナポレオンは自身の統治者としての威厳を高めるために、盛大な戴冠式を行った。その様子を描いた『ナポレオンの戴冠』(1805ー7)はダヴィドの代表作となった。その他にも、新古典主義の指導者として、過去のみならず同時代の出来事を画題に、数々の名作を生み出していった。アングルなどの弟子を育てた。

ダヴィドによるナポレオン1世

 ナポレオンとともに去る

 だが、肝心のナポレオンが戦争の失敗で失脚することになる。すなわち、1814年のワーテルローの戦いでの敗北を最後に、完全に政治的生命を絶たれたのだ。

 ナポレオンの失脚とともに、ダヴィドもフランスの画壇から、というよりもフランスから去った。ブリュッセルに亡命したのである。その地でアトリエを開き、主に神話に関する絵画を制作した。フランスが王政に移行する中、ダヴィドはこの亡命先で没した。彼の名画の多くはルーヴル美術館に所蔵されている。

ジャック=ルイ・ダヴィドの肖像画


ジャック・ルイ・ダヴィド 利用条件はウェブサイトにて

こういう面白い解説もあります

美術評論家として人気の山田五郎さんがYoutube公式チャンネルにてお送りするダヴィドの解説(画像をクリックすると始まります)

 ダヴィドと縁のある人物


ナポレオン1世:フランス革命で成り上がった軍人。ダヴィドをお抱え画家にし、フランス革命の重要なシーンを描かせた。

ドミニク・アングル:革命期のダヴィドの弟子。フランス新古典主義の代表的な画家となって活躍した。

 ダヴィドの代表的な作品


『マラーの死』(1793)
『サビニの女たち』(1799)
『レカミエ夫人像』(1800)
『ナポレオン1世の聖別式』(1805ー07)

画像の利用


おすすめ参考文献


木村三郎監『新古典主義美術の系譜』中央公論美術出版, 2020
Sophie Monneret, David et le néoclassicisme, Terrail, 1998

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